◯滝田委員 私からは、四つのテーマについてご質問をいたします。
まず、一つ目のテーマとして、本年九月に策定された都市づくりのグランドデザインについて伺います。
先ほど森口委員からも質問ありましたが、私からは、このグランドデザインをどう実現していくかという観点からお伺いをいたします。
このグランドデザインは、二〇四〇年代を目標時期とした東京の将来都市像と基本的な方針を示した長期計画ですので、既存の政策、事業の延長線にとどまるのではなく、二〇四〇年代に向けてチャレンジをしていくことが重要です。その意味では、今回のグランドデザインには、東京が魅力を高めていくための挑戦的なアイデアや、将来都市イメージが多数含まれた意欲的な内容となっていると思います。いかにこの挑戦的な大方針を具体的なものに落とし込み、実現に向けて前に前に進めることができるのかということが次の課題だと考えます。
つきましては、グランドデザインで示す都市像の実現に向けて、今後、どのように取り組みを進めていくのか、お伺いをしたいと思います。
327◯五嶋都市づくりグランドデザイン担当部長 都市づくりのグランドデザインに基づき、今後は、具体的なまちづくりをどう展開していくかが重要となります。その際、取り組みを有効に進めるには、個別の施策をそれぞれに実施するだけではなく、複数の施策にまたがる分野横断的な課題を同時に解決できるようなテーマについて、関係者で共有し、連携しながら、さまざまな施策に一体的に取り組むプロジェクト型の都市づくりとして進めることが必要でございます。特に重点的に進めるべきテーマである、ストックを生かした道路空間のリメークや、緑、都市農地の保全、活用などをパイロットプロジェクトとして推進してまいります。
また、都市計画区域マスタープランや用途地域等に関する指定方針など、取り組みの具体化に必要となる個別の法定計画や各種方針等を策定、改定し、政策誘導の仕組みも充実させてまいります。
二〇四〇年代を見据えて、今なすべきことに工夫を加え、よりよい都市づくりを展開し、活力とゆとりのある高度成熟都市の実現につなげてまいります。
328◯滝田委員 ご説明ありがとうございます。私からの意見となりますが、魅力ある都市をつくっていく上で克服しなければいけないのは、分野横断的な政策課題をどのように進めていくかということではないかと思います。
グランドデザインの将来都市像の絵の中には、例えば河川空間を活用したにぎわいの場づくりや舟運活用などが描かれています。これらを実現するためには、治水や河川管理といった従来の河川行政の機能はしっかりと果たしつつ、規制を緩和して、まちのにぎわいづくりのために利活用の幅を広げるということが必要になります。
規制でブレーキを踏むことと、にぎわいを生むために新たな活用をするというアクセルを踏むこと、特に分野横断している領域において、こうしたアクセルとブレーキが対立して進まないということがないように、既存の部局の枠組みだけではなくて、横断的に人を集めたプロジェクトとして政策課題に取り組むということは、有効な進め方と思います。ぜひともご説明いただいたようなプロジェクト型の都市づくり、実践して取り組んでいただきたいと思います。
また、政策誘導型の都市づくりですが、グランドデザインに掲げていることを着実に前に進捗していくためには、各種のより具体的な計画に落とし込むことが必要だと思います。こちらの進め方については、今後検討が進んでいくと思いますので、適宜進捗をお伺いしてまいります。
次に、二つ目のテーマとして、地下鉄について幾つかの観点でお伺いをいたします。
まず、東京メトロと都営地下鉄の経営状況についてお伺いいたします。
329◯中島都市基盤部長 東京メトロ、都営地下鉄とも経営状況は黒字で推移しておりまして、直近の平成二十八年度における東京メトロの決算につきましては、企業の売上高に相当いたします営業収益が三千八百二十九億円、経常利益が八百四十一億円、当期純利益が五百九十九億円となっております。また、同年度におけます都営地下鉄の決算につきましては、営業収益が一千四百六十八億円、経常利益が三百二十九億円、当期純利益が三百二十九億円となっております。
330◯滝田委員 ご回答いただきましたとおり、東京メトロ、都営地下鉄ともに、直近の決算状況は黒字であることがわかりました。特に都営地下鉄について調べてみますと、長く厳しい経営が続いておりましたが、大江戸線の乗客の伸びなどもあり、近年は十一年連続で黒字となっています。累積の欠損金や長期債務等を見ても、財務体質は改善をしてきております。
個々の経営としては良質化が進んでいると思いますので、今後も関係局とともにご尽力をお願いしたいと思います。
一方で、個々の良質化とは別に、東京の地下鉄網を構成する東京メトロと都営地下鉄の二者が一体となることで実現できることも少なくないと思いますが、地下鉄一元化に向けた認識についてお伺いをいたします。
331◯中島都市基盤部長 地下鉄の一元化につきましては、最近では、平成二十二年度に、都が国や東京メトロとともに設置いたしました東京の地下鉄の一元化等に関する協議会、この場におきまして検討を行いました。この検討におきまして、平成二十三年二月に今後の取り組みを整理しておりますが、地下鉄の経営一元化は、東京の地下鉄のサービス改善、一体化を進める上で有効な方策ではあるものの、国は経営一元化には課題が多いとしております。また、関係者間で意見の隔たりが大きく、協議を継続することとしております。
こうしたことから、二〇二〇年東京大会の開催に向けまして、まずは都民や外国人観光客の利便性向上に直結いたしますサービス改善、一体化を進めているところでございます。
332◯滝田委員 経営の一元化には固執せずに、まずは利用者目線でのサービスの一体化に取り組んでいること、理解いたしました。
そこで、現在、両地下鉄が進めているサービス改善、一体化について、取り組み内容をお伺いしたいと思います。
333◯中島都市基盤部長 地下鉄の利便性を高めるため、都営地下鉄と東京メトロでは、改札通過サービスの導入、両地下鉄を自由に利用できる旅行者向けの割安なTokyo Subway Ticketの発売、列車の増発や区間延長による最終列車の繰り下げなど、さまざまな取り組みを連携して進めてまいりました。
このほか、二〇二〇年東京大会の開催に向けまして、多言語に対応した券売機の共同開発、乗りかえルートのバリアフリー化など、東京の地下鉄が利用者にとってより一層使いやすいものとなるよう取り組んでおります。
334◯滝田委員 ご説明ありがとうございます。将来的に地下鉄の経営一元化を進めていくべきと私は考えておりますが、それに向けたステップの一つとして、利用者の利便性向上を図るサービスの改善、一体化の取り組みは着実に進めていただきたいと思います。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を一つの期日目標とすることは、取り組みを進捗させる上で有効と思いますので、両地下鉄がしっかりと連携して進めるべきだと思います。
一方で、サービス改善、一体化を目指してきた経緯や、社会的な意義の大きさを考えると、事業者任せではなくて、都としても進捗を見ていくべき事柄と思います。何をいつまでにどこまで進めるのか、目標の設定、そして進捗管理をどのようにするか定めた上で、モニタリングしていくことをお願いいたします。
最後に、少し異なる論点となりますが、地下鉄駅空間の質的向上についてお伺いをいたします。
地下鉄駅は、多くの人が利用する重要な施設であり、周辺のまちづくりとも連携して、地下鉄駅の質的向上に取り組むべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
335◯中島都市基盤部長 東京が持続的に発展するには、東京の強みである発達した鉄道ネットワークを生かし、駅を中心に誰もが移動しやすいまちをつくることが重要でございます。特に、都心部の地下鉄駅では、出入り口がわかりにくい駅や、複数路線の乗り入れなどにより乗りかえが不便な駅がございます。
今後、自治体や鉄道事業者など関係者と連携を図りまして、都市再生や開発に関するさまざまな制度も活用して、駅と一体となった開放的な地下広場や、駅とまちをつなぐバリアフリー化された歩行空間の整備などを誘導することによりまして、地下鉄駅を中心としたまちの顔づくりを進めますとともに、便利でにぎわいのある空間の創出に取り組んでまいります。
336◯滝田委員 鉄道駅と異なりまして、これまで地下鉄駅とその周囲は、乗降客数の割に拠点性が低く、いわゆるまちの顔となれていませんでした。今後は、まちづくりの観点から、地下鉄駅の拠点性を高めていく取り組みをぜひ進めてほしいと思います。
虎ノ門の新駅開発などは、周囲の再開発が計画されており、一体的な整備ができるよい事例づくりの機会になると思います。都として、こうした観点から後押しをしていくことも期待をいたします。
また、既存駅においては、ご説明いただいたような不便のある駅や、周囲での再開発機会がある駅などを中心に、取り組みを優先的に進めるべき地下鉄駅を選定するといった具体的な方針を立てて推進いただきたいと思います。
三つ目のテーマは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村地区の整備におけるモデル的な事業である水素エネルギーの活用と、BRT、バス・ラピッド・トランジットの整備についてお伺いをいたします。
選手村地区の開発において、新たな都市コンセプトとして、水素を地域エネルギーとする方針が示されています。まず、選手村地区で水素エネルギーを活用することについてどのような意義があると考えているか、お伺いをいたします。
337◯山下市街地整備部長選手村担当部長兼務 水素エネルギーは、利用段階で水しか排出しない環境性能、また災害発生時に独立したエネルギー源とできることなど、多くの利点を有し、その普及が期待されております。
快適性とエコな暮らしの両立を目指す選手村地区のまちづくりにおきましては、この水素を先導的に導入し、東京二〇二〇大会を契機に、環境先進都市のモデルとなる取り組みを推進していくことに意義があると考えております。
338◯滝田委員 ご説明をいただきました意義に対して、当該選手村地区のまちづくりにおいては、具体的にどのような取り組みを行っていくのか、お伺いをいたします。
339◯山下市街地整備部長選手村担当部長兼務 選手村地区におきましては、水素ステーションを整備し、燃料電池バス等の車両への供給のほか、実用段階としては日本初となる住宅などの街区への供給を進めてまいります。この取り組みを通じまして、水素のすぐれた貯蔵性を生かし、災害時においても電気や熱の供給を行い、まちの自立性を確保してまいります。
340◯滝田委員 当該水素エネルギーの活用に当たっては、都としては、インフラ整備のためのスペースの提供や環境分野での補助はしている。しかしながら、基本的には民間事業の資金にて事業運営を行うものと理解しています。
その上で、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーづくりの観点では、都としての役割は重いと考えますが、当該事業において都としてどのようにアピールを行っていくのか、お伺いをいたします。
341◯山下市街地整備部長選手村担当部長兼務 水素社会の実現には、都民や民間企業など、多様な人々の理解や利用促進が必要でございます。
都は、世界中から多くの人が集まる東京二〇二〇大会時に、エネルギー事業者の協力を得ながら、実際の水素供給システムの展示やパビリオンの設置などのプレゼンテーション事業を実施することといたしました。この機会を捉え、水素の普及に向け、その有用性や、我が国の最新技術を広く国内外に発信してまいります。
342◯滝田委員 整備段階で都が事業としてできるのは、国内外への発信などが中心ではありますが、選手村でのモデル的な事業を踏まえて、将来的な横展開のための検証や知見を蓄えること、これは都が率先して行っていただきたいと思います。
整備コストの削減や、安全かつ効率的な精緻なインフラシステムを構築できるように、民間事業者とともに、将来につながる取り組みを目指していただくことをお願いいたします。
続いて、BRTの整備について、概要と意義についてお伺いをいたします。
343◯中島都市基盤部長 BRTは、定時性、速達性を確保した、バスをベースとする都市交通システムでございます。連接バスなどの運行によりまして、路面電車に遜色のない輸送力と機能を有し、鉄軌道のシステムと比べ、導入も容易でございます。
BRTの導入によりまして、地域の公共交通の利便性向上、利用環境の改善が図られます。
344◯滝田委員 選手村周辺においては、鉄道系の交通網がありませんので、導入コストの低いBRT導入は意義あるものと考えます。また、基盤となる道路網等も整備されていく予定であり、導入適地と考えます。
一方で、BRT導入は、当該地域だけではなくて、今後、他地域への広がりも想定されるモデル的な意味合いも大きいと理解しております。今後、BRTを導入する上で想定される課題についてお伺いをいたします。
345◯中島都市基盤部長 BRTは、定時性、速達性を確保した交通システムでございます。その導入に際しましては、BRT、その機能が発揮できますよう、運行ルートの設定や走行空間の確保、一般の自動車交通への影響、事業採算性など、さまざまな課題に対応する必要がございます。
なお、都は、選手村の周辺でございますが、臨海地域の交通需要の増加に対応するため、環状二号線を活用いたしまして、都心と臨海副都心とを結ぶBRTの導入に取り組んでいるところでございます。
346◯滝田委員 説明ありがとうございます。今後、選手村周辺地域での整備を進める中で、こうした問題を着実にクリアできるよう、論点を整理して、想定をしっかりした上で進めていただきたいと思います。一方で、当該地域での整備、運用を検証し、知見を蓄えていただきたいと思います。
BRTが、既存のバス交通と鉄道交通の間の中規模輸送をしっかりと担えるとなれば、現在、十分な交通網がない地域においての選択肢となります。当該事業で終わらせず、試金石とできるように、整備段階から将来的な横展開を意識して動いていただけますよう、お願いを申し上げます。
最後のテーマとなりますが、自動運転車と都市づくりについてお伺いをいたします。
近年、自動運転の技術開発が進んでいることに注目が集まっております。ドライバーが運転に全く関与しない完全自動走行の領域、いわゆるレベルフォーを、二〇二五年をめどに技術的に実現する方針と発表する本邦大手自動車メーカーもおります。
政策的な対応においても、遠い未来の話ではなくなってきていると思います。特に、都市整備の領域は長期の取り組みであることから、整備を進めているうちに、自動車や交通を取り巻く技術革新によって都市構造の前提が大きく変わってしまう、そんな可能性も出てきたと思います。そのような時代を迎えつつあるものと、私は捉えております。
一方で、これまでの国内での議論は、自動運転の実現に向けた技術的な話や制度論的な話が中心であり、都市構造もしくは都市像がどのようなものになるのか、議論が深まっていないと認識をしています。
そのような中で、都として本年度に調査を実施する予定であることは、大変意義深いと考えています。平成二十九年度予算の調査委託の内容及び今後の調査方針をお伺いいたします。
347◯中島都市基盤部長 都は、二〇二〇年に向けた実行プランを踏まえまして、自動運転技術が都市の道路交通や道路空間に与えます影響や効果、都市づくりへの活用方法などについて調査検討を進めていくこととしております。本年度は、基礎調査といたしまして、自動運転技術に関します国やメーカーなどの取り組みの調査や都民への意識調査などを行いますとともに、東京の地域特性に応じた都市づくりへの活用について検討を行っているところでございます。
次年度以降も、自動運転技術が普及した東京の将来を見据え、検討を深めてまいります。
348◯滝田委員 長期的な都市整備の方針を左右する可能性のある技術革新だと考えております。東京都が、都市づくりの観点からは、率先して国内の議論をリードしていくべきと考えております。
ご説明いただきましたとおり、単年でできるものではないと思いますので、自動運転技術が普及した社会における東京の将来像の具体的な検討をしっかりと進めていただきたいと、私から強く要望をいたします。
以上で私からの質問を終わります