◯滝田委員 よろしくお願いいたします。
当委員会は平成二十九年度の決算を審査するものでありますが、振り返りますと、平成二十九年度は、小池都知事が就任後初めて編成された予算に基づいた事業執行であります。下水道事業においても、都民ファースト、ワイズスペンディング、情報公開の三つの観点を重視し、取り組まれてきたものと存じます。
特に昨年十二月末に報告された下水道事業の見える化改革の報告書は、長期的な事業の重要性を議論する上で土台となる情報をわかりやすく分析し、数字で示しております。他の事業分野においても参考となる内容と評価をしております。
都政改革本部が本年度より職員主体の自律改革に移行したことで、より一層、改革の中身が問われることになります。特別顧問にいわれなくても改革が進められると証明していくこと、今後もご尽力をお願いしたいと思います。
本日は、大きく四つのテーマについて、順に質問をいたします。長期的な経営の持続性、災害対策、水質の改善、多摩地域の課題についてお伺いしてまいります。
東京都内は、多摩地域も含めて下水道の普及率はほぼ一〇〇%に達しており、東京の今後の下水道事業の最大の課題は、老朽化するインフラの計画的な更新であります。
後ほどの質問にて数字を確認してまいりますが、今後の更新需要に膨大な資金が必要であることから、単年度の決算が黒字かどうかだけを見ても妥当性がいえません。見える化改革の報告書に既に示されている部分もありますが、下水道事業の長期的な経営の持続性について、まず質問してまいります。
区部の下水道管の計画的な更新に当たっては、法定耐用年数から三十年延命化することで、平均費用が最小となる経済的耐用年数八十年をサイクルに更新計画を策定していると理解しています。
そこで、現行の経営計画五年間における建設費について、総額及び再構築、浸水対策、災害対策など施策ごとの年間平均事業費を伺います。
また、老朽化した下水道管の更新、いわゆる再構築事業について、完了までの概算の総事業費をお伺いいたします。
6◯池田計画調整部長 経営計画二〇一六の計画期間でございます平成二十八年度から平成三十二年度までの五カ年の年間平均総事業費は約一千七百八十億円です。
各施策の年間平均事業費は、再構築が約八百十億円、浸水対策が約四百億円、震災対策が約二百四十億円、汚泥処理と合流式下水道の改善、エネルギー、地球温暖化対策などを合わせた事業費は約三百三十億円でございます。
下水道管の再構築は、アセットマネジメント手法を活用し、計画的かつ効率的に事業を実施しています。
具体的には、適切な維持管理により、経済的耐用年数まで延命化するとともに、中長期的な事業の平準化のため、区部を下水道管の整備年代により三期に分けて進めています。
再構築に当たっては、道路を掘削せず、比較的短い工期で、かつ低コストで下水道管をリニューアルできる更生工法を活用し、効率的に事業を実施しています。
なお、区部全域の小さな下水道、いわゆる枝線の再構築に必要な今後の概算総事業費については、地域の条件や設置する下水道管の大きさなどを加味せずに、これまでの事業費の平均値などによって算定した概算ですが、約二兆二千億円程度と想定しております。
7◯滝田委員 詳細にご説明ありがとうございます。大まかには年間千八百億円弱の事業費が必要で、そのうち八百億円が老朽化した下水道の更新分となる。そして、この八百億円のうち、下水道管の更新費用部分を今後累積していくと、二兆二千億円という巨額が必要になるということであったかと思います。
東京都区部では、歴史的背景や狭小な道路地下空間など物理的状況もあって、下水と雨水を同一の下水道管で流す合流式の下水道となっています。先ほどの概算、二兆二千億円は、この合流式で更新をしていく場合に想定される事業費と理解をしています。
合流式下水道では、降雨が多いときに一部汚水を河川に放出することになるため、環境面を考えると分流式が望ましいのではないかとの議論もあります。
分流式ではなく合流式下水道での再構築を行う方針と理解していますが、この方針の根拠となる、分流式化した場合と合流式下水道の改善を進めた場合の事業費の比較についてお伺いします。
また、合流式下水道の改善事業の内容について伺います。
8◯池田計画調整部長 仮に区部の合流式下水道区域を分流式下水道に改築する場合の概算事業費は、総額で約十兆三千億円程度と想定しています。
なお、そのほかに、宅地内の排水設備を分流式に改造する経費は、都民の負担となります。
また、今後、区部の合流式下水道区域で貯留施設の整備などにより合流式下水道の改善を行う場合は、総額で約七千億円程度と想定しています。
それぞれの概算事業費については、地域の条件や設置する下水道管の大きさなどを加味せずに、これまでの事業費の平均値などによって算定いたしました。
合流式下水道は、大雨の際には、まちを浸水から守るため、汚水まじりの雨水を河川などへ放流するという仕組みですが、汚水まじりの雨水のうち、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設の整備などを進め、合流式下水道の改善に取り組んでまいります。
9◯滝田委員 分流式化にしても合流式の改善にしても、先ほどの二兆二千億円に対して追加でかかる費用であります。
特に分流式で整備を行う場合には、合流式のまま改善を行う場合に比べ、桁の違う費用が上乗せでかかるということであり、現実的ではないということであります。
合流式のまま改善を行う事業とは、ご説明のありましたとおり、貯留施設を整備することにより降雨初期の汚水を河川に放出させないようにするということ、これで相当程度の改善が可能であると聞いております。
後ほど改めて確認いたしますが、合流式の改善事業をある程度進めて、下水道法施行令に対応する水準を平成三十六年度までに達成するということは現時点で決定している、一方、その後については定まっていないと理解しています。
仮に整備費用をその後もかけていくのであれば、合流式の改善によって分流並みの水質を目指すこともできるとは聞いています。しかしながら、かける費用と求める水質のバランスの問題であり、今後も費用と効果を検証し、冷静に三十六年度以降の方針を検討していく必要があると考えます。
次に、一般会計からの繰入金に関連して質問をしたいと思います。
区部の平成二十九年度の財政収支の状況と主な収入について伺います。
一般会計繰入金については、雨水処理分の維持管理費と資本費の内訳もお伺いいたします。
10◯安藤総務部長 区部の平成二十九年度の財政収支は、収入が約四千八百十億円に対して、支出が約四千八百四億円であり、差し引き約五億五千万円の黒字となってございます。
これは、経営計画二〇一六の収支計画、約六億円の赤字に対して、施設の補修費や電気料金などの維持管理費等の縮減により、約十一億円の収支改善となったものでございます。
主な収入としましては、下水道料金が約一千七百十一億円、一般会計繰入金が約一千六百十五億円でございます。
一般会計繰入金のうち、雨水排除に要する経費に係る繰入金は約一千五百二十七億円であり、そのうち、維持管理費分は約二百三十一億円、資本費分は約一千二百九十七億円となっております。
11◯滝田委員 一般会計から多額の繰り入れがあるわけですが、その点について伺っていきます。
区部では、汚水の処理に関しては、徴収した下水道料金によって維持管理費の支払いや施設の更新等に必要な企業債の返済、いわゆる資本費の支払いを行っています。
一方、雨水の処理に関しては、広く公益を目的としているため、一般会計から維持管理費や資本費の支払いを行っていると理解しています。
維持管理費及び資本費において、汚水処理及び雨水処理の負担割合並びに割合の算出方法について概要をお伺いします。
12◯安藤総務部長 下水道事業では、汚水処理に要する経費は下水道料金により賄い、雨水排除に要する経費は一般会計が負担することが全国的な原則となっておりまして、雨水排除に要する経費など一般会計が負担する経費の考え方や算出方法につきましては、総務省の基準で定められてございます。
当局におきましては、この基準をもとに、電気料金や補修費などの経費ごとに汚水分と雨水分の割合を算出した上で、維持管理費と資本費のおのおのについて負担割合を算定しております。
現行の負担割合は、維持管理費は汚水分が七六%で、雨水分が二四%、資本費は汚水分が三九%で、雨水分は六一%となっております。
13◯滝田委員 維持管理費については汚水分の割合が高いが、資本費については雨水分の割合が高い。これは、維持管理費は汚水の浄化処理のウエートが高いためであり、資本費は、管渠、つまり下水道管の整備費用のウエートが高く、かつ一時的に大量に流入する雨水を排除するために管径が大きく設計されているためであると理解しております。
次の質問で、より詳細に伺いたいと思います。
先ほどご説明のあった維持管理費及び資本費の割合について、管渠、ポンプ所、水再生センターごとに算出方法をお伺いいたします。
なお、維持管理費については、主な費用に関してご説明願います。
14◯安藤総務部長 汚水私費、雨水公費の原則のもとで、主な費用がどのように案分し、算出されるかにつきましてお答え申し上げます。
管渠については、維持管理費のうちの補修費と、そして資本費については、合流式下水道の区域において汚水管渠と雨水管渠をそれぞれ整備したと想定した場合の建設費の比率で案分してございます。
ポンプ所については、維持管理費のうちの電気料金は汚水と雨水をくみ上げる量の比率で、資本費は汚水ポンプと雨水ポンプの能力の比率で案分してございます。
水再生センターにつきましては、維持管理費のうちの電気料金は汚水と雨水の処理水量の比率で、資本費は汚水関連施設と雨水関連施設の資産額の比率で案分してございます。
15◯滝田委員 算出の考え方について詳細を理解することができました。
下水道料金という利用者による負担と、広く都民のお金を使う一般会計の繰り入れによる負担にて分担していることから、適切に計算していくことが求められます。
消費税の増税分を除くと、下水道料金は、平成十年以降の約二十年間、変わっていないと聞いております。
今後、二〇二五年以降には、東京も人口減少していくことが予見されており、加えて、長期的な更新需要や災害対策などに係る費用は増大していく可能性が高いものと見受けられます。
ついては、将来の見通しを踏まえた下水道料金の設定となっているのか、お伺いをいたします。
16◯安藤総務部長 当局におきましては、主要施策それぞれについて中長期的な事業目標を明らかにした上で経営計画を策定してございます。
経営計画においては、計画期間内に実施する事業を定めて、施設の建設及び維持管理等の総費用と、料金や一般会計繰入金等の総収入を見積もり、コスト縮減や資産の有効活用など最大限の企業努力を加味した上で、財政収支を見積もっているところでございます。
お話の下水道料金を含めまして、将来を見据えた経営計画を策定し、下水道事業を運営してきてございます。
17◯滝田委員 下水道管を長寿命化させて八十年をサイクルにする、とても息の長い事業であります。これだけ長期の将来を見通すことは困難であるとは承知をしております。
一方で、繰り返しとはなりますが、更新費用などの増大と人口の減少期を迎えていくという中で、事業の安定性、持続性に危機が訪れる可能性を懸念しています。そのようなことのないように、今の段階から備えなければいけません。
今後の下水道事業のあり方をどのように検討していくのか、お伺いをいたします。
18◯安藤総務部長 今後とも下水道事業を安定的に実施していくため、将来の見通しを踏まえ、下水道局と監理団体であります東京都下水道サービス株式会社との役割分担の見直しとあわせまして、直営や現在の業務委託も含め、包括的民間委託やコンセッション方式などのさまざまな施設運営手法につきまして、経済性だけでなく、安定的なサービスの提供といった観点も重視しまして、平成三十年度から三十二年度までの三カ年にわたり幅広く検討していくものでございます。
19◯滝田委員 ご説明ありがとうございました。持続的な下水道事業を進めていく上で、企業努力を積み上げていくとともに、余力のあるうちに運営のあり方をしっかり検討していくことが肝要です。説明にありました三カ年にて、検討内容を明らかにしていくことを改めて強く要望いたします。
次のテーマに移り、災害対策について確認していきます。
ゲリラ豪雨と呼ばれるような猛烈な雨が降ることがふえております。一方で、東京は都市化が進み、地表面で雨水を吸収できる割合は、下水道整備が進んだころと比べて大きく減少していると聞いています。昨今の豪雨災害も踏まえ、対策を強化していく必要性があります。
また、震災時に被害を軽減するための施策も求められております。
まず、浸水対策ですが、見える化改革の報告書等でも示されているとおり、五十ミリ対策について優先度を踏まえて進めるとともに、七十五ミリ対策についても地区を定めて重点化する。そのようにすることで、事業費用を抑えながら、緊急度の高い地域を効率的に整備していく方針であると理解しています。
この時間七十五ミリ降雨に対応する施設整備について、その経緯をお伺いいたします。
20◯池田計画調整部長 東京都ではこれまで、昭和六十一年の東京都における総合的な治水対策のあり方についての報告に基づき、既定計画として時間五十ミリ、長期計画として時間七十五ミリ、基本計画として時間百ミリに対応すべく、順次、レベルを向上させるものとしています。
この報告を踏まえ、平成十九年に策定した東京都豪雨対策基本方針では、おおむね三十年後の長期見通しとして、河川や下水道の流下施設、貯留施設、流域対策や家づくり対策をあわせ、おおむね時間七十五ミリの降雨までは、床上浸水や地下浸水被害を可能な限り防止することを目標として浸水対策を進めてきました。
さらに、近年の降雨特性や浸水被害の発生状況を踏まえ、対策を一層効果的に進めるため、平成二十六年に東京都豪雨対策基本方針が改定されました。下水道整備については、時間五十ミリの対策を基本としつつ、甚大な被害が発生している地域などを重点化し、下水道管や貯留施設などの整備により、時間七十五ミリの降雨に対し浸水被害を防止することが目標とされております。
21◯滝田委員 地域ごとの特性も鑑みた上で、下水道以外の施策も組み合わせて対応水準を上げていくということと理解いたしました。
時間七十五ミリ対策について、どのような考え方で重点化する地区を定め、対策を実施しているのか、お伺いいたします。
22◯池田計画調整部長 下水道局では、区部全域での時間五十ミリ降雨への対応を基本とし、くぼ地、坂下など浸水の危険性の高い対策促進地区や、かつての川を利用している浅く埋設された幹線の流域などの重点地区を選定し、対策を実施しています。
また、浸水被害が発生した場合、人命にかかわる重大な被害につながるおそれのある地下街や、過去に甚大な浸水被害が発生した市街地を雨水整備水準のレベルアップを図る地区として選定し、最大で時間七十五ミリ降雨へ対応する対策を進めております。
23◯滝田委員 整備を進めていく上で、用地の確保などに課題はあると理解いたしますが、迅速に整備を進めて、大規模な災害を未然に防げるように今後も尽力をいただきたいと思います。
次に、耐震対策について伺います。
第三回定例会の我が会派の代表質問において、帰宅困難者対策として、一時滞在施設等に関連する下水道管に対しても耐震対策を拡充するよう伺いました。これに対し、新たな指定約五百カ所にも耐震対策を進めていくとの方針が示されました。
下水道管の耐震化について、これまでの事業期間及び平成三十二年度の目標値に対する現在の進捗状況並びに一施設当たりの事業費をお伺いいたします。
24◯猪八重建設部長 下水道管とマンホールの接続部の耐震化につきましては、阪神・淡路大震災を契機に開発いたしました既設マンホールの耐震化工法を導入し、平成十二年度より本格的に事業を実施しております。
現在の進捗状況についてでございますが、当初は避難所などを対象としており、平成二十五年にはターミナル駅や災害復旧拠点などに対象を拡大いたしまして、現在では約四千六百カ所を対象として対策を進めております。
このうち、経営計画二〇一六の最終年度でございます平成三十二年度末までに四千百五十五カ所を完了させる予定でございまして、平成二十九年度末時点で約九〇%の箇所の対策が完了いたしました。
今後、帰宅困難者が一時的に待機できる一時滞在施設など約五百カ所にも対象を拡大し、下水道管の耐震化の充実を図ってまいります。
お尋ねの一カ所当たりの事業費につきましては、これまでの実績から平均いたしますと、約七百万円でございます。
25◯滝田委員 施工場所によっても費用は異なると思いますので、これまでの事業費で単純計算はできないと思いますが、今回の追加的な対策に係る費用は数十億円なのだろうと規模感は理解できます。
下水道管の耐震化に加えて、マンホールの浮上抑制対策を実施していますが、事業期間と平成三十二年度の目標値に対する現在の進捗状況につき、お伺いをいたします。
26◯猪八重建設部長 交通機能を確保するマンホールの浮上抑制対策でございますが、マンホールの浮き上がりの被害が深刻であった十勝沖地震を契機にいたしまして開発したマンホールの浮上抑制工法を導入いたしまして、平成二十年度より本格的に事業を実施しております。
当初は緊急輸送道路などを対象としておりまして、平成二十三年度からは緊急輸送道路と避難所などを結ぶ道路に対象を拡大いたしまして、現在では約一千二百五十キロメートルを対象として対策を進めております。
現在の計画は、平成三十二年度末までに事業を完了させる予定でございまして、現在の進捗状況につきましては、平成二十九年度末までに約九五%の箇所の対策が完了いたしました。
27◯滝田委員 これら耐震対策について、工法の工夫や費用の縮減に努めながら、今後も計画的、着実に進めていただきたいと思います。
また、過去の被災事例を参考に、想定される問題と対処法について不断の検証を重ねていくことをお願いいたします。
次に、水質の改善について質問していきます。
さきの質問で、合流式を引き続き採用する事業面での根拠について説明がありました。
降雨初期の下水が河川に放流されないように貯留施設を整備するなど、合流式下水道の改善対策を進めることにより、どの程度の水質になるのか、お伺いをいたします。
28◯池田計画調整部長 下水道法施行令における雨天時放流水質基準は、平成三十六年度時点において、水の汚れをあらわす生物化学的酸素要求量、いわゆるBODが、処理区の平均で一リットル当たり四十ミリグラム以下と定められています。この基準は、雨天時において、合流式下水道の雨水はけ口などから公共用水域に放流される放流水の水質基準です。
下水道局では、この下水道法施行令の基準を達成するよう、合流式下水道の改善を進めております。
29◯滝田委員 続いて、合流式下水道の改善対策の進捗状況と見通しについてお伺いいたします。
30◯池田計画調整部長 合流式下水道の改善対策として、下水道局では、雨天時に河川などに放流されていた降雨初期の特に汚れた下水を水再生センターで処理するための下水道幹線の増強や、一時的に貯留する施設の整備、雨水はけ口やポンプ所から流出するごみなどを削減するための対策などに取り組んでいます。
下水道幹線の増強や、はけ口などでごみの流出対策については、おおむね完了しています。
また、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設については、平成三十六年度における下水道法施行令の基準を達成するために必要な貯留量、百七十万立方メートルの整備を進めています。
平成二十九年度末までに、累計約百十六万立方メートルの貯留施設の整備を完了しました。
経営計画二〇一六期間中に、下水道法施行令対応に必要な貯留量の約九割に相当する貯留施設の整備を完了する見込みでございます。
31◯滝田委員 これまで下水道の整備が進むにつれ、河川や東京湾の水質は大幅に改善されてきました。
一方で、東京湾で発生している赤潮の発生数などは、現在、横ばいの状況で推移しています。今後、さらに良好な水環境を形成するためには、赤潮の発生原因である窒素やリンを削減していくことが有効であります。
ついては、下水道局で進めている窒素やリンをより多く除去するための高度処理について、具体的な取り組み状況をお伺いいたします。
32◯池田計画調整部長 下水道局では、窒素やリンを大幅に削減できる高度処理を導入してきました。しかし、高度処理の導入には多くの時間と費用が必要であり、電力使用量も増加するという課題がありました。
そこで、既存の施設の改造により、水質改善効果を早期に高めることができ、かつ電力使用量が少ない準高度処理及び東京都下水道サービス株式会社などと新たに開発した高度処理技術の導入を進めることとしました。
平成二十九年度末までに、水再生センター全体の計画処理能力に対して、準高度処理と高度処理を合わせた割合を四五%まで向上させております。
33◯滝田委員 窒素やリンを除去しつつ、エネルギー消費も抑える取り組みを進めていることはわかりました。
一方で、都民理解という観点では、窒素やリンがどういう数字になったというだけではわかりにくく、どういう環境になるのか、もう少しイメージがわかるとよいと思います。
高度処理の今後の計画について伺うとともに、それによって東京湾がどのように変わるのか、見解を伺います。
34◯池田計画調整部長 東京湾の全窒素及び全リンの環境基準値は、年間を通して、二枚貝などの底生生物が生息できるような値として定められています。
環境局の調査結果によると、東京湾の全窒素及び全リンは、緩やかな減少傾向にありますが、環境基準値を達成していない年もあります。
下水道局では、水再生センター全体の計画処理能力に対して、経営計画の最終年度である平成三十二年度末までに、準高度処理と高度処理を合わせた割合を五五%まで向上させる計画でございます。
一方、東京湾への窒素及びリンの排出量のうち、東京都が占める割合は約四〇%であり、東京湾の水質改善には関係自治体との連携も重要です。そのため、これまでも、東京湾の水質改善に向けて、総合的な施策を推進するために設置された、国と関係自治体で構成する東京湾再生推進会議を通じて連携を図っています。
今後も、高度処理の導入を推進するとともに、関係自治体とも連携することで、東京湾の良好な水環境の創出に貢献してまいります。
35◯滝田委員 少し答えにくい質問だったかと思いますが、お答えいただきましてありがとうございます。
都市化の流れの中で、海、河川、水辺といったものは犠牲にされてきたように思います。これからの東京は、そうした海、河川、水辺を人の手に取り戻す、そして活用できるようにしていく、そのような転換期にあると考えています。
また、別な観点ですが、政策立案において、アウトプットとアウトカムの違いを認識する必要があるといわれています。施策に対する直接的な結果であるアウトプットの数値目標も重要ではありますが、その施策によって、どういった問題をどの程度解決するのか、つまり、成果であるアウトカムを意識して、そこから逆算して政策立案をしていく。そうしなければ、お金に限りがある中で、どれぐらいのお金をかけて何を解決していくか、都民のコンセンサスの形成は難しくなっていると考えています。
続いて、関心が高まっているマイクロプラスチックに関して質問します。
海洋中のマイクロプラスチックについて関心は高まっておりますが、原因物質や流出経路の特定、あるいはマイクロプラスチックによって具体的にどのような悪影響が起こるのか、現時点では判明していないことも多いというような認識をしています。
下水道も一つの経路にすぎないと考えていますが、例えば水再生センター等で調査をすることは、事実解明に有効な手段になると考えます。
マイクロプラスチックそのものの除去に関する法的な基準がないことは承知しておりますが、固形物の一種であることから、現時点で、水再生センターにおいて下水中の小さな固形物の除去に関する基準があるのか、伺います。
あわせて、マイクロプラスチックに関する下水道局の取り組みについて伺います。
36◯佐々木施設管理部長 下水道法におきましては、委員ご指摘のとおり、下水中のマイクロプラスチックそのものの除去に関する基準はございません。
お尋ねの下水中にある微細な固形物につきましては、下水道法で浮遊物質という項目が定められており、その基準は、放流水一リットル当たり四十ミリグラム以下とされております。
当局の水再生センターにおける水質測定の結果では、この基準を満足しており、浮遊物質の九割以上が除去されております。
また、現在の当局の取り組みといたしましては、マイクロプラスチックの調査方法などに関する情報収集に努めているところでございます。
37◯滝田委員 水再生センターの処理対象にマイクロプラスチックはないということではありますが、下水の処理システムにおいて浮遊物質が除去される過程では、相当程度、マイクロプラスチックも除去されると推測されます。
また、河川などの流域により、マイクロプラスチックの含有量が異なることも想定されます。
こうしたことを明らかにするためにも、関係各局や国と連携して、下水道における調査を見据えた情報収集に努めてもらいたいと思います。
最後に、流域下水道事業について幾つか伺います。
多摩地域の下水道には、流域下水道のほかに、市町村が単独で下水道事業を行う単独公共下水道があります。このうち、私の地元である八王子市や立川市など、市が管理する単独処理場は、老朽化が顕著になっているものの、敷地が狭く、施設の更新などへの対応が困難な状況にあります。そのため、流域下水道への編入に向けた取り組みを進めていると聞いています。
そこでまず、単独処理区を流域下水道に編入するメリットについて改めて確認するとともに、取り組み状況について具体的に伺います。
38◯小団扇技術部長 単独処理区を流域下水道へ編入するメリットにつきましては、これまで単独処理区の処理場で困難であった施設の更新や高度処理などが可能となるとともに、スケールメリットを生かして、施設整備に係る建設事業費の軽減や維持管理に関する費用の縮減を図れることでございます。
このことから、八王子市、立川市などの単独処理区を流域下水道に編入するため、関係市や関係機関と協議しながら、必要な手続や施設整備などを進めております。
平成二十九年度は、八王子市の単独処理区につきましては、平成三十二年度の全量編入に向けまして、八王子水再生センターで水処理施設などの整備を進めています。
また、立川市の単独処理区につきましては、平成三十五年度の編入に向け、北多摩二号水再生センターで下水を受け入れるために必要なポンプ棟の建設工事に着手いたしました。
引き続き、関係市と連携し、編入事業を着実に進めてまいります。
39◯滝田委員 今後も単独処理区の編入を着実に進めていただきたいと思います。
多摩地域の市町村は、下水道担当職員の減少や、財政状況も、より厳しい状況にあり、下水道事業のさらなる効率化が必要になってくると考えられます。これに対応するためには、単独処理区編入のようなハード面の対策に加えて、都と市町村が連携するソフト面の対策もあわせて行うことが有効です。
そこで、多摩地域の下水道事業の効率化に向けた市町村との広域連携に対する取り組み状況について伺います。
40◯小団扇技術部長 委員お話しのとおり、多摩地域の市町村の効率的な下水道事業の運営には、都と市町村がより一層連携を深めることが重要でございます。
このため、具体的な取り組みとして、それぞれの市町村が水質監視の目的で実施していた公共下水道での水質検査につきまして、流域下水道と五市との間で平成十二年度から共同で開始し、平成二十八年度に全三十市町村に拡大し、平成二十九年度も継続して実施してまいりました。
また、最新の技術情報や市町村の先行的な取り組みなどに関しての情報を共有するとともに、市町村の下水道担当職員を対象に、流域下水道本部からメールマガジンを定期的に配信しております。これらを通じて人材育成を支援しております。
引き続き、市町村との連携強化を図り、多摩における下水道事業の効率化を図ってまいります。
41◯滝田委員 多摩地域の下水道事業の効率化に向けた都の取り組み状況がよくわかりました。引き続き、市町村との連携を強化し、多摩地域の安定的な下水道事業運営の形成に努めていただきたいと思います。
さまざまな質問をしてきましたが、下水道事業の長期的な持続性に対して健全な危機感を持ち、今後とも、見える化改革でも取り組んでいただいているように、都民ファースト、ワイズスペンディング、情報公開の三つの観点で進めていただきたいと思います。
本日の質疑の中でもお答えいただきましたが、下水道局と監理団体である東京都下水道サービス株式会社との役割分担の見直しや、包括的民間委託やコンセッション方式などのさまざまな施設運営手法について、適切に検討いただきたいということを最後に申し添えまして、私からの質問を終わります。