◯滝田委員 報告案件であります都市復興の理念、目標及び基本方針案につきまして、質問をいたします。
都では、平成十三年、西暦では二〇〇一年に、震災復興グランドデザインを策定しておりますが、その後、中越地震、東日本大震災などがありまして、策定当時には想定されていなかった課題が多数明らかとなりました。都の大規模災害時の復興のあり方について、大きな見直しが必要であると認識をしております。
まず初めに伺いますが、今回、震災復興グランドデザインそのものを見直しするのではなくて、復興の理念、目標と基本方針のみを改定する理由についてお伺いをいたします。
127◯安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 平成十三年に策定しました震災復興グランドデザインは、直下型地震による被害を想定し、被災後に作成する復興の理念、目標と基本方針や広域インフラと市街地整備の計画、実現方策をあらかじめモデルプランとして示したものでございます。
その後、全国各地で発生した地震、火災、浸水被害などの大きな被害からの復興におきまして、さまざまな被害に柔軟に対応できるように準備をしておくことが必要との教訓が得られました。
こうしたことを踏まえまして、都市復興の基本的な考え方である都市復興の理念、目標及び基本方針を改めて策定することとしました。
広域インフラと市街地整備の計画や実現方策につきましては、今後も活用できるものでございまして、変更しておりません。
128◯滝田委員 以前の震災復興グランドデザインのように一つのモデルプランとするのではなくて、さまざまな被害状況を想定して、柔軟に対応できるようにしていくことを重視すると。そのような観点で、さまざまな被害想定をもとに訓練あるいはシミュレーションを行って、成果を蓄積していくということは重要であるというふうに思います。
大規模災害においては、どこでどのような被害が起こるのかある程度の予想はできても、必ず想定外の被害ということも起こり得ます。大きな被害を受けた地域では、従前に戻す復旧ではなくて、英語ではビルディング・バック・ベターというふうにいうようですけれども、創造的復興というのを行うことを考えなければいけません。
ついては、都市復興における都市像や計画をあらかじめ定めておくものなのか、もしくは被災後に策定するものなのか、都の見解をお伺いいたします。
129◯安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 都市復興における都市像などをあらかじめ定めることは、都民と行政との間で共有することによりまして、被災時における迅速かつ計画的な復興につながると考えております。
今回の基本方針等では、被災時の都市復興に当たりましても、平時と同様に、都市づくりのグランドデザインで示した都市像や都市計画区域マスタープラン、すなわち区域マスの実現に取り組んでいくことを明確にいたしました。
一方、近年の大災害では想定を超える被害が発生している場合もあることから、今後の災害の状況によっては、被災後の都市復興で区域マス等を実現するだけでは同程度の被害を受けるおそれがあると判断される場合には、都市づくりのグランドデザインで示した都市像を目指しつつ、必要に応じ、人口等の将来見通しや土地利用の方針の見直しも視野に入れて検討を行いまして、区域マス等を改定するとしております。
130◯滝田委員 今、想定を超える被害というふうにありましたけれども、大規模に被害を受けてしまった場合、そもそもそういうことが起こらないようにしていくということも、もちろん重要なんですけれども、そういった場合には、例えば防災性を抜本的に向上させるような区画整理であったりとか、盛り土をする、道路の拡幅、緑や公園のネットワークをつくっていくといったようなことも必要でありまして、マスタープランに書かれたこと以上の取り組みも必要となることもあり得るというふうに考えます。
また、我が会派の代表質問でも触れましたけれども、例えば、関東大震災におきましては、後藤新平によります帝都復興構想がもととなりまして、靖国通りや明治通りなどの幹線道路の整備、隅田公園や清澄公園などの公園の整備、あるいは区画整理が進みまして、防災力が大いに向上したと、近代都市に東京を生まれ変わらせたというような事例もあります。
そうしたことも過去にはありますけれども、さまざまな被害が想定されますし、そうした大規模な被害を受けてしまったときというのは、都市をどうしていくのかということを考える一つの機会にはなるということでありますので、柔軟に対応できるようにその場合にも整えていただきたいというふうに思います。
昨年五月に、私たち都民ファーストの会東京都議団の当時の都市整備部会のメンバーで、東日本大震災の被災地を訪問いたしました。復興時の経過や課題をお聞きしましたけれども、例えば、復興が早かった地域は、もともとコミュニティ内の連携がよかったことに加えまして、被災後も避難所や仮設住宅などにおきましてコミュニティを維持できる形であったというふうに聞いております。それによりまして、復興期の連絡や合意形成が比較的スムーズに行われたということでありまして、ほかにもさまざまな教訓が東日本大震災ではあったかというふうに思います。
ついては、東日本大震災などの過去の大災害におけます都市復興の教訓について、どのように反映していくのかお伺いをいたします。
131◯安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 近年の大災害におきましては想定を超える被害が発生したために、被災を繰り返さないよう既定の都市づくりの計画を見直し、復興を進めている事例がございます。
そのため、今回の基本方針等では、都市づくりのグランドデザインで示した都市像を目指しつつ、それだけでは同程度の被害を受けるおそれがある場合において、必要に応じ、人口等の将来見通しや土地利用の方針の見直しも視野に入れて検討を行いまして、区域マスなどを改定するとしております。
また、早期に住民の生活の安定確保を図るため、復興住宅政策の果たす役割の大きさが確認されました。
そのため、被災後の住宅の供給、復興が適切に図られるように、住宅の復興と連携して都市復興を進めるとしております。
さらに、被災後、当該地区やその周辺で地区住民を初め多様な主体が連携しながら生活再建に取り組んだ地区では、都市復興が早く進んでおります。
そのため、被災者や被災企業を初め、NPOやボランティアなども含めまして、関係者の連携により都市復興に取り組むとしております。
132◯滝田委員 最後にご説明いただきましたポイントですけれども、都民や企業などとの共助であったり連携については、実際の取り組みとして何ができるのかということを、ぜひ具体策の検討を整理していただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
また、復興の初期においては、被害状況の早期の把握であったり、建築制限などの権利関係の整理が大変重要となることも、東日本大震災などにおける大きな課題であったと理解をしております。
この点については、都市復興基本計画検討委員会におきましても学識者の皆様にご意見をいただいて、議論されていると理解をしています。
さて、都市復興の理念、目標及び基本方針案の作成とあわせまして、東京都震災復興マニュアル復興施策編の都市の復興部分の修正を行っているというふうに理解をしておりますが、両者の関係についてお伺いをいたします。
133◯安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 今回の基本方針等は、被災後の都市復興の基本的考え方を示すものでございます。
一方、復興手順や執行体制を示した東京都震災復興マニュアル復興施策編の都市の復興につきましては、今回策定する基本方針等を踏まえまして、被災後の都市復興手順や都と区の役割分担など執行体制を修正していくこととなります。
134◯滝田委員 先ほども触れましたけれども、復興初期における被害状況の早期把握や建築制限などの権利関係の整理は、震災復興マニュアルの改定においてしっかりと整えていただくように要望をいたします。
ここまでの質問でお答えいただいたこと、また事前にお伺いしていることなどからしますと、二〇〇一年のころとは異なりまして、一つの都市復興グランドデザインを定めるという形ではなくて、新たな形で都の復興のあり方を整えるという方向性であるというふうに感じています。
今回報告案件となっております都市復興の理念、目標及び基本方針の策定、あるいは都市づくりのグランドデザインやマスタープランとの整合性、今年度の震災復興マニュアルの大規模な改定、また、今後訓練やシミュレーションを重ね蓄積していくこと、こうしたことを段階的に行って、都の復興のあり方について統合的なものを形づくり、都民にもわかりやすく示していくということが今後必要であろうというふうに思いますので、ぜひとも検討をお願いいたします。
今回の基本方針策定を皮切りに、どのようなスケジュール感を持っているのか、今後の方針をお伺いいたします。
135◯安部市街地整備部長選手村担当部長兼務 今回お示ししております基本方針等の案につきましては、都民の皆様からのご意見などを踏まえまして、六月下旬に公表する予定でございます。その後、来年度改定予定である区域マスに反映しまして、実効性を持たせてまいります。
震災復興マニュアルの修正につきましては、今年度、総務局が主体となりまして、都市整備局も連携して行う予定でございます。
また、今回の基本方針等を活用しまして、都市復興に係る図上訓練を継続的に実施しまして、都や区市町村の職員の実務能力を向上させてまいります。
あわせて、都民への普及啓発を図るため、震災復興シンポジウムの開催や都市復興にかかわる展示を継続的に実施するとともに、都民が都市復興プロセスを学ぶ民間団体などによるセミナー等の開催を、今年度創設した補助金を活用しながら促してまいります。
136◯滝田委員 私もおととし、基礎自治体職員を対象としました復興訓練を見学させていただきました。その後も復興訓練については強化をしているというふうに理解をしております。
こうした復興訓練や、あるいはシミュレーションをして蓄積していくということもあるというふうに思うんですけれども、どういった内容を訓練しているのか、あるいは訓練からどういった課題が明確となったのかということについて、なかなか公表されている資料等では把握することができません。
こうしたことも広く共有することで、都内の自治体だけではなくて、全国の自治体の参考であったりとか、あるいは学識者も含めて分析に役立つものだというふうに思います。例えば、年に一度など定期的に取りまとめて、もちろん公開できない情報もあるかもしれませんけれども、一定の課題を整理しまして公表するべきであるというふうに考えております。シミュレーションの蓄積が、都の事前復興の取り組みにおいて重要であるということを鑑みまして、ぜひとも検討をお願いいたします。
都市が成熟しまして、都市づくりに直接かかわる現場の機会が減っているということは、都のみならず、基礎自治体や、あるいは都市計画等の専門家におきましても課題であるというふうにいわれています。
佐藤都技監が昨年就任された際には、技術職の育成の重要性というものを、インタビューの記事で述べられていたというふうに私の方でも記憶をしております。
今回の基本方針等の策定を踏まえまして、今後、都市復興に関する訓練を積み重ねていき、いざというときに復興まちづくりを考えられる職員を育成していくことが大変重要と考えますけれども、都技監の意気込みをお伺いいたします。
137◯佐藤東京都技監 技術職員ということで、技術の継承というのは常に永遠の課題といいますか、そういうことがあると思いますけれども、特に東京の都市づくりというものは、都市計画道路などの基盤整備、あるいは土地区画整理事業、それから市街地再開発事業といった面整備、さらには地区計画による誘導手法など、いろんなまちづくりのやり方がございます。
そこには、地元の協力はもちろんそうなんですが、行政の職員がそこに関与して、それでまちづくりの職員が頑張ってきたということで、東京のまちがつくられてきたと考えてございます。
東京が被災した場合に、東京の早期の生活再建、それから経済の再生を図るためには、こうしてこれまでに蓄積した都市づくりのノウハウ、技術力を活用しながら、地域特性や被災状況に応じて、都市復興に向けて各種の事業をできるだけ短期間に進めていく、そういうことが求められます。
ですから、例えば仮に、もしあした大地震が起こって、直下型地震が起こって、そうしたら私ども東京都の技術職員はすぐさま復興に向けて取り組む、そういう覚悟がございます。ただ、できればまだ起きてほしくない、もう少し技術を磨いていきたい。
ちょっと話が脇にそれますが、震災復興事業がございました。後藤新平の計画があって、震災復興をやったわけですけれども、それから二、三十年後に戦災復興事業というのをやっております。
そのときには、かつて震災復興事業に携わった若い職員がすっかりベテランになって、でも、まだいて、その職員たちが戦災復興の立ち上げに相当貢献したという話は伺ったことがあります。
それで、私なんかが新規採用で入ったころは、まだ戦災復興をやったことのある人が残っていて、おまえらこういうふうにやったんだぞと、あるいはそういう人たちから話を聞いた人たちもいて、みんなこういうふうに頑張ってきたみたいだよという話をじかに聞いて、しかも戦災復興の事業の図面なんかも目の当たりにして、本当にこんな大変なことをやってきたのかと、そういう肌感覚で仕事をしてきたのを覚えております。
そういう意味では、そういう技術をどうやって継承していくのかということで、平時から面整備などに携わる職員一人一人の専門技術を高めるというのは非常に大事ですし、今後は、東京都だけが頑張るというのではなくて、区市町村の職員のまちづくり技術を高めていく必要がございます。
ですから、平時から区市町村の職員も巻き込んで都市復興の訓練に精を出しているということでございまして、区市町村のまちづくりに対する技術支援も行わなければいけない、そういうことで、技術力の向上を促してまいっております。
その上で、これからの都市復興は、関東大震災みたいに一遍に燃えるのではないかもしれない、あるいは複合災害が来るかもしれない、いろんなパターンも想定して準備を進めなければいけない。
つまり、これまでの平時のまちづくりの技術を磨くだけではなくて、想定外を想定するといいますか、練習を積み重ねていくということが大事だと思っていますので、そういった図上訓練を日ごろから積み重ねていく。
その中には、当然、住民の合意形成についても大事な技術になってまいります。そういった全体が、多分復興の技術ということになってくると思いますので、それを訓練していきたいと思います。
その上で、今もう一つ大事なのは、防災都市づくりでございます。市街地の不燃化、耐震化、そういうことを今のうちにどんどん進めていく、いざというときに被害がなるべく少ないように抑え込む、それがまさに事前復興だと思っておりますので、その事前復興についても、引き続き精いっぱい取り組んでまいりたいと思います。
以上です。
138◯滝田委員 ありがとうございます。都技監の意気込み、あとは課題認識をしっかりとお伺いすることができまして、私たちとしましても、震災復興については一丸となって取り組んでいかなければいけないというふうに思いますので、しっかりと後押しをできるようにしていきたいなというふうに思います。
職員の皆様方一人一人の宿っている力というものにつきましては、なかなか目に見えるものではありませんけれども非常に重要でありますし、いざというときに本当に発揮されるというものでありますので、しっかりと瞬発力というんでしょうか、高めていただくということを取り組んでいただきたいなというふうに思います。
最後に意見となりますけれども、首都東京における都市復興のあり方は、大変重要かつ都民の関心もとても高いものであるということはいうまでもありません。特に都市整備にかかわる部門の専門的な知見というのは、大きな要素であります。
今回、基本方針におきましてはこの都市整備委員会で審議をされておりますけれども、残念ながら、マニュアルの改定につきましては都市復興のパートも含めて総務委員会での審議となる見込みであると伺っています。
この都市整備委員会でマニュアル改定の都市復興のパートを審議しないということでありますので、本日の委員会でこの後も多数意見が出るというふうに思いますけれども、都市整備局の責任で、しっかりと総務局を通じて総務委員会に伝わるようにしていただきたいなというふうにお願いを申し上げます。
また、首都東京の復興でありますので、国の側でも首都での大規模災害への備えということについては強化をしてもらう必要があると思いますので、今後の各種改定のプロセスの中で、国との情報交換や連携を密にしていただくように重ねて要望いたします。
以上で私の質問を終わります。